木々の間から太陽の日差しがキラキラと降り注ぐ。
いつも当たり前のように見ていた光景。
その中にいつも彼女の笑顔があった。

「メロー!またそんなとこに上って!危ないじゃない」
「気持ちいいしも上れよ」

幹に寄りかかり、下から怖い顔で叫んでる彼女を見下ろせば、は呆れたように苦笑いを浮かべた。
てっきりまた怒るのかと思えば、何故か腕まくりをして木の枝へ手を伸ばす。
その行動にギョっとしてる間、彼女はするすると木を上り、あっという間に俺のいる場所まで辿り着いた。

「……ホントに上ってくるんだ」
「何よ。メロが上れって言ったんじゃない」

彼女はそう言って眩しいくらいの笑顔を見せる。
はいつだって俺にとったら太陽のような存在で。手が届きそうで届かない。

「またLに怒られても知らないからな」
「あー冷たいなあ。メロは」

そう言って俺の額を軽く指で小突き、明るく笑う。こんな穏やかな日常が、いつまでも続くと思ってたんだ。
Lがいなくなるまでは――。


⌘ ⌘ ⌘



の笑顔。木々の合間に見える太陽……全てが眩しい……。

――メロ!

キラキラと反射する光が眩しくて目を細めれば、が俺の名を呼ぶ。

――メロ。

返事をしたつもりだったのに何の返答もなく。不思議に思って隣にいる彼女を見れば、そこには誰もいない。
あるのは真っ白な光だけだ。

あれ……どうしたんだ?
ここは……どこだ?
今まで目の前にあった見慣れた光景が、いつの間にか全て白に染まっている。
いや……白いんじゃない……そう見えるくらいに眩しい光が俺を照らしている。
隣にいたもいつの間にか光の真ん中にいて、こっちを見て笑ってる。
どうして……どこへ行くんだ?
何故俺から離れていく――。
俺は……どこへ向かってる……?

体が浮くような感覚の中、俺は必死にへと手を伸ばした。

――メロ!

が……俺を呼んでいる。

――メロ!

何だよ……ここにいるだろ?早くこっちへ――。

そう思いながらも、必死で手を差し伸べた。

「……

俺を見つめながら微笑んでいるへ指先を伸ばせば、再び視界が白に染まる。
そして木々の合間から、また太陽が見えた気がした。

「……っ……ゴホッ……」

急に空気が送り込まれ、オレは激しく咳き込んだ。
その瞬間、伸ばしていた腕に痛みが走る。

「……つっ……ゴホッゴホッ……――」

朦朧としていた意識が次第にハッキリしてきて。ぼやけた視界の中に飛び込んできたのは、眩しい太陽の日差しと共に、空高く舞い上がる黒煙――。

「……ゲホッ……っ?」

急に視界が黒い煙に遮られ、俺は慌てて辺りを見渡した。

「……これは……」

それまで感覚のなかった体に高熱を感じて息を呑む。
ゴォォォっという音。肌が焼けるような熱……
目の前の建物は真っ赤な炎で埋め尽くされ、俺は少し離れた場所に倒れていた。

(そうか……高田が……)

そこで何もかも思い出した。
オレは高田を浚い、ここまで辿り着いた。だがあの女がいきなり隠し持っていたライターで自分の服に火を放った……
それを止めようとしたが、いつの間にか漏れていたバイクのガソリンに気づき、俺は堪らず外へ逃げ出して……その後のことは覚えていない。
きっとバイクのガソリンに引火したせいで爆発し、その勢いで車にも燃え移ったんだろう。
俺は逃げる途中、吹っ飛ばされて意識を失った……というところか。
喉や体のあちこちが痛むのはそのせいだ。

(爆発時の衝撃で火の粉や煙を吸い込みすぎたか……)

痛むのを堪え、何度か深呼吸をしつつ、体勢を低くして燃え盛る建物から離れた。
少し体が痺れているものの、どうにか炎の熱から逃れて木に凭れかかる。

「ゴホッ……クソ……あの女……!」

この様子じゃあの女は助からないだろう。連れ出そうとしたが凄い勢いで腕を振り払われ、そのまま火の中へ飛び込んで行く高田を助けることは出来なかった。
あのまま高田は火にまかれ、爆発で吹っ飛び死んだはずだ。

だが突然のあの行動……自殺……か?
いや、あの自我のない様子はきっとキラの仕業……
高田の様子は明らかにおかしかった。
攫った時も最初はあれほど怯えていたというのに、火をつけた時は妙に冷静で。
俺の声などまるで届いてないように見えた。
となると……キラに操られ、殺された、ということか……。

「やっぱりな……」

俺が高田を攫ったことを知り、キラは邪魔者を消したというわけか。
いや、キラからすれば、俺ごと殺したかったというところだろう。
何とも素早い行動だ。
こういう時のために高田には全てを用意させてたようだな……。
だが……実際に手を下したのはキラではなく。キラに選ばれた別の人間……。
ということは……ニアとの対決の前にキラ側は何らかの行動をしたということになる。
それにニアが気づいていればいいが……

「……クソ……このままじゃマズイな……」

次第に火の勢いが強くなっていくのを見上げながら、俺は痛む足をどうにか動かした。
ここは教会の裏手にあたる。このまま林を真っ直ぐ行けば大通りに出られるはずだ。
空を見上げれば、木々の間からさっきも見た太陽の日差しが降り注いでいる。

さっきのは……夢か。
久しぶりにあの頃の夢を見た。
記憶の中にあった彼女との思い出。オレを呼ぶ、彼女の声……

「おかげで助かったな……」

もしあのまま意識を失っていたら、今頃俺も火にまかれて焼け死んでいただろう。
の元へ行かなければという想いが、俺の意識を取り戻させてくれた。

――メロ!

ハッキリと聞こえた気がした。の、俺を呼ぶ声が――。

「――……ロ!メロー!!」
「――ッ?!」

林に向かって歩きかけた時。炎の音と共に俺を呼ぶ声が聞こえた気がして足を止める。
まさか、幻聴だ。
彼女がこんな場所にいるはずがない。あんな夢を見たから聞こえた気がしただけだ。
そう思おうとした。
だがその声はもう一度。今度はハッキリと俺の耳に届いた。

「……メロ!どこにいるの?!メロ!」
……っ?」

燃え盛る教会の方から彼女の声が聞こえてくる。そんなはずはない、と思いながらも、ハッキリと聞こえたの声に、俺は思わず彼女の名前を叫んでいた。

「……!!」

踵をひるがえし、元の場所に戻れば、教会横の木々の合間に人影が見えた。

?!」
「……ッ!メロ?!そこにいるの?!」
「……!危ない、戻れ!」

彼女がここにいるなんて信じられなかった。だが木々の合間から姿を現したのは、間違いなくだった。

「メロ……!」

俺に気づいたがこっちへ走ってくる。けれど、彼女の周りの木々には炎が燃え移り、今にも倒れそうだ。それに気づいた時、俺も一気に走り出していた。

「…危ないっ」

激しく燃えていた太い木が、ゆっくりと彼女の方へ傾いていく。でも間一髪のところでを抱きしめ、反対側に転がった。同時にドォォンという大きな音と共に木が倒れてくる。

「メロ……」
、怪我は?!」

急いでその場から離れると、彼女の頬を両手で包む。涙と煤で汚れた顔のまま、は何度も首を振りながら抱きついてきた。

「私は平気……それよりメロが無事で良かった……」
「……良くない!どうして来たっ」

無事だと分かった安心感でつい声を荒げてしまう。でもは泣きながら「メロが心配だったのよっ」と叫んだ。

「メロは……いつも何も言ってくれない……心配しながら待ってる私の身になってよ……!」
……」
「今だってどんなに怖かったか分かる?!あの炎の中にメロがいるかもしれないって思ったら……怖くて……怖くて……」

震える手で胸元を掴んでくる彼女の恐怖が伝わってくる。
こんなにも心配してくれていた、という事実に愛しさでいっぱいになった。
俺の胸の中で泣きじゃくる彼女を抱きしめながら、さっき夢に見た過去の笑顔を思い出す。
あの頃は幸せで、こんな風に泣いてるを見たことがなかった。
何で……こんなことになってしまったんだろう……。

「……メロ」

その声に顔を上げれば、ハルがと同じように顔も服も煤けた状態で立っていた。
彼女を見た瞬間、ああ、そうか……と納得がいった。

「お前がをここへ?」
「……彼女がどうしても、と言って。ニアも了承してるわ」
「ニアが……?」
「ええ。それより……もうすぐここへ警察が。早く行きましょう」

ハルがそう言った矢先。遠くでパトカーのサイレン音が聞こえてきた。
の肩を抱いて立ち上がると、「車は向こうに止めてあるの。急ぎましょう」とハルが先を歩いて行く。

、口、押さえるぞ」
「……ん」

風で舞い上がる煤がの口に入らないよう服の袖で抑えてやりながら、火の粉を避けてハルの後ろをついて行く。
少し歩いたところで教会の正面へ出た。そこには車が一台止まっている。

「あれです。早く乗って」

言われたとおり、車の後部座席にと乗り込む。ふと窓の外を見れば、崩れかけた教会が炎の中に消えていくのが見えた。一歩間違えれば俺もあの中で灰になっていたかもしれない。

「パトカーがついたようね。見つかると厄介だから二人は体を低くして隠れてて」
「……ああ」

と二人で身を低くして後部座席に隠れると、車が勢い良く走り出した。
次第に近づいてくるパトカーの音に一瞬緊張する。だがハルが機転を利かして逆方向へと曲がり、サイレンの音は少しづつ遠ざかっていく。ホっと息をつけば、「……もう大丈夫よ」と声がして、俺とは体を起こした。

……大丈夫か……?」
「……うん。メロは?怪我はない?」
「……かすり傷だ。大したことない」
「でも血が――」
「大丈夫だって――」

一瞬、と見つめ合う。さっきは必死で忘れていたが、彼女とこうして向き合うのは久しぶりだ。急に気恥ずかしくなってきた。
少しの間、会わなかっただけなのに。もう何年も会っていなかったような、そんな感覚。

「元気……だったか?」
「うん……メロは?」
「俺は……見たとおりだ」

彼女の前髪を指で避けて、そっと髪を撫でた。指先から柔らかい髪がサラサラすり抜けていく。

「……メロ――」

そのまま頭を引き寄せ、唇を塞ぐ。何度か口付けたあとでゆっくりと離せば、と至近距離で目が合った。

「会いたかった……」
「……ん」

俺の言葉には涙を浮かべながらも微笑んでくれた。
生きて戻ってこれたのは、この笑顔にまた会いたかったから――。
それ以上の理由なんか、きっとない。

「……お取り込み中のとこ申し訳ないけど――」
「……別に取り込んでない」

一気に現実へと引き戻され、深い溜息をつく。彼女は気まずそうにミラー越しで視線を向けてきた。

「一応ニアに報告しなくちゃいけないの。連絡してもいい?」
「……ああ。いや、待て。俺が話す」
「分かった。そこのパソコンを使って。パスワードは――」

その言葉に頷き、傍にあったパソコンを開く。パスワードを打ち込んで繋いだ瞬間。待っていたかのように応答があった。

『……ハル、どうなりましたか?』

第一声がそれで。俺は軽く深呼吸をすると、「ニア……」と声をかけた。

『……っ?メロ……ですか?』
「ああ……」
『無事……でしたか……』
「……まあな。もう全部知ってるんだろ?」
『ええ。ハルから聞きました。それで高田は……?』
「死んだ……」
『死んだ……?まさか――』
「俺じゃない。あの女がいきなり自分に火をつけて……まるで自殺しようとしたみたいだった」
『ではキラが……?』
「ああ。高田がそう動くように操って殺したんだろうな」
『……』

簡単に説明すると、ニアは何も言わず静かに息を吐いたようだった。

『それで……ハルと一緒にいるということは無事にに会えた、ということですね』
「……ああ」
『では、そのままハルに空港まで送らせます。すぐに二人で日本を脱出して下さい』
「……何?」
『ハルから聞いてると思いますが……私はこのまま作戦を実行に移します。メロはを連れて国外へ出て下さい』
「……」
『メロはすでに前回の誘拐の件で日本の警察からも指名手配されてます。日本にいればそのうち見つかるでしょう。そうなればキラにだって顔を知られてしまう危険もある』
「……ああ、そうだな」
『ですから今のうちに国外へ逃げて下さい。これはのために言ってるんです』
「……ああ、分かってる」

そう応えながらも、隣で不安そうな顔をしているを見た。
ニア、お前はいつだって俺が反論出来ない言い方をする……。

『手配は全てこちらでします。今は言うとおりにしてください。今回の誘拐事件のせいで少なくとも私の計画を邪魔したんですから』
「……キラの方で何か動きはあったか?」

俺の言った意味が伝わったのかは知らないが、ニアは一瞬だけ言葉を切り、静かに息を吐き出した。

『それは言えません。メロは言ったとおりを連れて逃げてくれればいい』
「……勝手な言い分だな、ニア」
『お互い様でしょう。メロだって今まで勝手に動いてきた。ですが……もう気が済んだのでは?』
「……」

気が済んだ、か。
出来ればキラをこの手で殺してやりたかった。
いや、今でもそう思ってる。だけど……。

「……お前の好きにすればいい。俺のやるべきことは一通りやった」
『なら今すぐに空港へ。パスポートやチケットはレスター指揮官が持っていきます。もちろんの分もあります』
「手回しがいいな……」

苦笑しながらそう言えば、ニアもかすかに笑ったようだった。

「ニア……」
『はい』
「……キラに……負けるなよ」
『負けるゲームはしない主義ですよ、私は』
「……ふん。お前らしい答えだ」

そこで通話は途切れた。パソコン画面を消して軽く息を吐くと、は心配そうな顔で見上げてくる。

「……メロ」
「……だそうだ。このまま空港に行ってくれるか?ハル」
「ええ、分かったわ」

ハルはそう頷くと、少しずつスピードを上げていく。
俺は軽く息を吐くと、不安そうなの肩を抱き寄せて額に口付けた。

「……そんな顔するな」
「でも……メロもキラを――」
「もういい……。やるべきことはやったつもりだ。Lの仇は……ニアがとってくれるさ」
「……メロ」

は僅かに瞳を揺らし、そして優しく微笑んでくれた。

「……最後の最後で……メロがニアに協力するなんてね」
「……協力したわけじゃ――」
「いいの。分かってる」

はそれだけ言うと、俺の肩に頭を乗せて目を閉じた。そうされることで俺も心の奥が癒されていく。
何も言わなくても、自分のことを理解してくれる人が、この世界に一人でもいるという心地よさに胸が熱くなった。

そのまま数時間。車を走らせ東京へ着くと、俺とは傷の手当てと煤で汚れた服を替え、再びハルの運転する車へと乗り込んだ。
途中、無事に逃げたというマットから連絡が入り、合流した三人で空港へと向かう。

「マットも無事で良かった……」
「いや、マジで危なかったけどな。"高田さま信者"はしつこいね。もうゴキブリなみ」

そう言ってマットは明るく振る舞い、心配顔のを笑わせてくれたが。本当は今度こそダメだと思った、と後でこっそり教えてくれた。
高田の護衛に囲まれ、全員から拳銃を向けられた時。一瞬は諦めたものの車を廃車にしながら無理やり逃げてきたらしい。
そういうマットもゴキブリなみの生命力だと思ったが、敢えて口にはしなかった。

「メロ。これがパスポートとロンドン行きのチケットよ」

空港に到着すると、ニアの部下だという男が待っていた。必要なものを全て揃えてくれたらしい。
俺達はそれをハルから受け取り、搭乗口へと急ぐ。

「ロンドン行きなのね。てっきりロスかと思ったけど」
「ああ、でもまあ……いいんじゃねーの?もうロスには見張る相手もいないんだし、ニアがキラを捕まえれば俺達は故郷へ帰るだけだ」
「うん……そうだね」

とマットはどことなく楽しそうで。久しぶりに故郷に帰れることが心から嬉しいんだろうと思った。
キラと対決を控えているニアのことを心配しながらも、やっぱり幸せの日々を思い出すあの場所が恋しいんだろう。
俺が――そうであるように。

何もかもあの頃のままというわけじゃない。
失ったものも沢山あった。
それでも、あの場所へと戻れば何かが変わるような気がしてる。
そう……全てが終われば……全てを終わらせることが出来れば。

「メロ……」
「ハル」

二人が搭乗手続きをする姿を確認しながら、俺は軽く頷いた。それを合図にハルがポケットからある物を取り出し、それを俺の手に握らせる。

「車で……待ってるわ」
「……ああ。すぐ行く」

それだけ告げると、俺は「早く早く!」と急かすたちの方へ向かい、搭乗口へと進んだ。

「へぇ、結構バレないもんだな」

マットはそんなことを言って笑っている。ニアの偽造パスポートのおかげで特に怪しまれることもなくセキュリティチェックも終わり、時間までには機内に乗り込むことが出来た。
は窓際へ座り手荷物などを整理し始めたどこか旅行気分のようだ。そんな彼女を確認しながら、通路向こうの席にいるマットの隣へ素早く座る。
マットは驚くでもなく、ただ黙って俺を見つめた。

「マット。お前に頼みたいことが――」
「……分かってるよ」
「……ッ?」
のことは俺に任せろ。ちゃんと無事に連れ帰るから」
「マット……」
「ああ、でも。これだけは言っておく」
「………」
「ちゃんと……生きて帰って来いよ?」
「……ああ。分かってる」

それだけ呟くと、俺はハルから預かった物をマットへ渡した。

「メロ?何よ、男同志でコソコソしちゃって」
「ああ、悪い」

不意にの声がして、俺は苦笑しながら彼女の隣へ戻った。チラっと時計を見ればもう少しで出発の時刻になる。

「ね、メロ」
「……ん?」
「ホントに……帰れるんだね」
「……ああ」
「何だか夢みたい……メロやマットとハウスへ帰れるなんて」
「夢じゃない。現実だ」
「うん……」

そう言って手を繋いでくる。そんな彼女の小さな手を強く握り締めれば、はふと顔を上げた。

「でも……ホントにいいの?」
「……何がだ?」
「キラのこと……ニアに全て任せちゃって」

は伺うような顔で俺を見つめた。彼女は俺の気持ちを理解してくれている。全部分かってくれている。

「ああ……俺はやるべきことをやったと言ったろ?もういいんだ」

ただ心残りなのは……君との約束を守れなかったことだけ。

キラを殺す――。

俺は最後の最後でそれを選ぶことが出来なかった。
この手を汚したとしても、貫きたかった思いが今でもある。
でもと再会し、この手に抱くことが出来た時。本当の意味で怖くなったのかもしれない。
彼女を一人にすることも、俺が一人になることも……。
Lやニアとは別のやり方でキラと対決するつもりが、を通じて、L。そしてニアの思いが嫌というほど分かってしまったから――。

ただ殺すだけが復讐じゃない。
それ以上に、キラという化け物に初めての敗北を味わわせたい。
いつからか、俺もそんな風に思うようになっていた。
ガキの頃からニアを追い抜き一番になりたかったはずなのに……今頃になってLの言ってたことを理解するなんて。

――ニアは冷静すぎて、メロは感情的になりすぎますが……合わせるとちょうどいいかもしれませんね。
――どういう意味?
――私を超えたいなら……二人一緒で、という意味ですよ。
――えぇ……?嫌だよ。俺は一人で超えてみせるさ。

二人で一人。その本当の意味が、今なら分かるよ、L……。

「……
「何?」

もし俺が行くと言えば、君も必ず一緒に行くと言うだろう。
だから……ごめんな。
これが最後の我がままだから。

「ん、メロ……?」

そっと唇を重ねれば、はかすかに頬を赤くした。その頬にも軽く口付け、静かに席を立つ。

「メロ、どこ行くの……?もうすぐ離陸なのに」
「その前にちょっとトイレだよ。すぐ戻る」
「うん、分かった」

笑顔で頷く彼女の頭をそっと撫でて、俺は彼女に気づかれないようマットに合図を送って通路を歩いていく。
その時、背後で、「せっかくファーストクラスなんだし何か美味い酒でも頼もーぜ」というマットの声が聞こえてきた。
足を止め、そっと振り返れば、の明るい笑顔が見えた。

嘘をついてごめん。
でも必ず……迎えに行く。
今度こそ全てを終わらせて。

そう心の中で呟き、最後の決戦を見届けるため、俺はひとり歩きだす。
今、心にある想いは一つだけ。どんな危険からも君を――。


守ってあげたい、なんて傲慢だけれど

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